スタートダッシュ
ボーカルのM君が、打ち込みドラムを再生しようと手元のMDプレイヤーの再生ボタンに手を掛けます。
オープニングの曲はHi-STANDARDの「START TODAY」。
まさしく今日の私たちに相応しいタイトルのスピードナンバーです。
Start Today
HI-STANDARD
カテゴリ: オルタナティブ
この曲は本来ボーカルから始まるのですが、私たちはドラムがいないので打ち込み音源に合わせて演奏しなければなりません。
なのでまずシンバルで4カウント取ったあと、約2小節の間シンバルに合わせてボーカルのみの歌が入ります。
その直後から怒涛の勢いで超スピードのドラム音源が流れ、そこにギターとベースが続きます。
本来ならね。
なぜか既定の回数をカウントする前にイントロを終えるシンバル。
200BPMオーバーで猛烈に突っ走るドラム。
困惑する私。ボーカル。ベース。お客さん。ていうか全員。
あとから聞いたところによると、本番直前にMDプレイヤーの再生/停止の確認のためにボーカルがボタンをポチポチしていたようで、そのために数カウント分を既に消化した状態でスタンバイしていたようです。
うーん、しばくぞ^^
それから途中のタイミングで何とか各々がドラムに合わせることに成功し、初っ端のミスを完全になかったことにしてニコニコとプレイ再開できるはずもなく、苦々しい表情のまま1曲目、そして2曲目が終わりました。
不安の幕開け
ここで一旦連続しての演奏が終わり、ほんの少しの間が空きました。
宇宙一シャイなボーカルのM君にはツライところではありますが、フロントマンとして頑張ってMCをして頂かなくてはなりません。

全然聞こえないんですけど!!
いや、私もどちらかと言えばMCなどは苦手なので気持ちは痛いほど分かりますが、もう少し声を張って頂くわけにはいかないでしょうか。
客席の奥でダベってる女子の方が声が大きいって、さすがにおかしいやろ。

いやいや、幼稚園のお遊戯会じゃないんですから。
もう少しこう、「今日は盛り上がっていきましょー!!」みたいなの、ないんですかね??
そもそも、そこまで極度のシャイなのに人前で歌うのは恥ずかしくない(※本人談)って、割と本気で意味が分からない。
有終の美に向かって
そんなこんなで色々ありつつも、演奏は続いていきます。
途中ボーカルのM君がMDプレイヤーの再生に手間取ってお通夜のような静寂が訪れたり、私がピックを落として10秒ほどギターが止まったり、半分ヤケクソになって頭をブンブン振りながら演奏し、ふと正面を向いたらこっち見てる全員真顔だったりと本当に色々ありましたが、なんとか終盤までやってきました。
ここまでお客さんの反応に一切触れていないことからも現場の状況は察して頂けるかと思いますので、このまま最後まで触れずに話を進めたいと思います。
ラスト数曲を残した最後のMC、ボーカルのM君がいつものように子犬のようなか細い声を出していたところ、なにやらベーシストのH君が覚醒しました。
彼はメンバーの中で一番のイケメン、そして誰もが認めるリア充であったため、この自分に似つかわしくない現場の空気に我慢できなくなったものと推察されます。

シーーーーーーン
アカン…アカンで。にいちゃんコレ、アカンやつや。
イケメンパワーを持ってしても、この空気を変えることはできないのか…。
イケメンが連れてきた女子達ですらも反応しないほどに、現場の空気はエライことになっています。
(※なおイケメンはライブ後に個別にチヤホヤされます)
…と、メンバーの誰もが諦めかけたその瞬間でした。
「ウェーイがんばれやー!」
「ピューピュー!(口笛)」
2人の勇者が、私たちに声援を送ってくれました。

…へへっ…こんなところでくじけてる場合じゃなかったみたいだな…どうやら勇気が湧いてきたぜ…!
たとえ99%失敗するとしても、残りの1%に懸けてやるっ!
時間も残りわずかだけど、暴れ倒してやるぜ!
やってやろうぜ、なぁみんな!!
こうして残りの数曲、先程までの静寂と特に変わらない雰囲気の中、私たちのライブは終了しました。
ライブ終了
始まりがあれば、終わりもあります。
あれだけ本番前は緊張した人生初ライブも、いざ始まってみると意外と呆気なく終わるものです。
確かに、お客さんの反応はお世辞にも良いとは言えませんでした。
自分たちの演奏にも多くの課題が見つかり、道のりはまだまだ長くゴールは果てしないです。
しかしながら、ライブをした者にしか分からないこの感覚…高揚感と表現するだけでは、何か物足りない気がするこの不思議な感覚。
…ボーカルのM君、ベーシストのH君と自然に目が合い、お互いニヤリと笑みを浮かべます。

なんて言うか、正直お客さんも盛り上がってなかったし(笑)、めっちゃ緊張してミスとかもあったけど…面白かったなぁ。
もっと練習しまくって、次やる時はこんなサブいライブにならんように、めっちゃ盛り上げような!
もうこんな空気でライブするのコリゴリやで(笑)!
今から後半戦頑張ってな(笑)。客席から気楽に眺めてるわ(笑)。

泣いた。
(以下略)
最後に
今回は私が自分の古傷をえぐり倒しただけの気もしますが、結局何が言いたいのか申し上げますと、ライブは楽しい!ということです。
え?楽しそうじゃなかった??楽しいんだよ!!(無理矢理)
確かにコレだけを見ていると、単に黒歴史を作っただけに見えなくもないですが、本当に楽しかったのは事実なんですよね。
お陰で私は更に音楽にのめり込んでいくことになり、卒業も危うい程度に成績が落ちたり、フリーターでフラフラしてたせいで就職に苦労したり、やっと入った会社で残業が多過ぎるあまり完全に社畜に染まってしまったりと割と悲惨な目に遭ってきていますが、今でも音楽は続けていますし、続けてきて良かったと心から思っています。
最近はDTMに夢中で、実際のバンド活動がおろそかになっている気がしますが…。
ちなみに最近はこんな感じの音楽をやっているので、良かったら聴いてみてくださいね!(宣伝)
結局何が言いたいのかというと、皆も恥ずかしがらずにどんどんライブやろうぜ!ということです。
確かにあまりにも完成度が低い、そもそもバンドとしての体を成していないレベルでライブを敢行してしまうとトラウマになる可能性はありますし、そもそも観ている側が割と苦痛なのでどうかと思う部分もあります。
しかし実際問題、「通常時の練習」と「1ヶ月後にライブが迫った状態での練習」では、集中力が変わってきますよね。
「失敗は成功のもと」とはまさしくそのとおりで、初心者のうちはどんどん失敗をし、それを糧とすることで失敗を知らない人間よりも強くなれます。
どんどん場数を踏んでいって頂きたいと思います。
最後に、ライブハウスではライブ映像をビデオに録ってくれるサービスが存在します(多分大抵のところでやってくれます)。
自分たちを客観的に見たらどのような感じなのか。
良かったところ・悪かったところを分析し、今後に活かすためにも非常に有効な教材となりますので、ぜひとも録ってもらうようにしましょう。
今回の私たちのライブに関しても、ビデオ映像が存在します。
おそらくバンド①に関してはベーシストのH君、バンド②に関してはボーカルのN君あたりがビデオテープを所持していると思うのですが…
もし当時のメンバーの方がここを見ているならば、3万円までであれば即金で支払うので、ぜひともそのビデオテープを私に譲ってください。
二度と誰の目にも触れられることのないよう、責任を持って処分したいと思います。
というわけで皆様も、ライブを楽しんでくださいね!(ニッコリ)