音楽

【徹底分析】LOOP H☆Rの2018年第1弾新曲「冬の歌」の曲構成について考察【メロラップ】

2018年2月13日

こんにちは。
LOOP H☆R研究家のインビンシブル吉岡(@invincible_ysok)です。

皆様はLOOP H☆Rというバンドをご存知でしょうか?

 

野獣が雄叫びを上げるかのように、全てを切り裂く鋭いギターが持ち味のギタリスト、TAKA氏。

現代音楽の枠を超えた、四次元の歌声を持つスーパーボーカリスト、YUKA氏。

この2人の紡ぎだす唯一無二のサウンドで、ネットの一部を騒がせている長野県出身の2人組バンドです。

 

 

2017年の8月末に新曲「」が発表されてから、はや半年弱。

この度、彼らが新曲「冬の歌」を発表しました。

 

 

今まで私は彼らの曲について分析した記事をいくつか書いてきたのですが、今回も懲りずにこの曲について分析してみましたので、暇つぶしにでも見て頂ければ幸いです。

 

今回は予想外の大物が参戦している事と、(LOOP H☆Rさんにしては)曲調がシンプルであまり書く事が無い為、そっちの方に重点を置いた内容となっておりますが、ご容赦くださいませ。

帰ってきたカリスマ

まず初めに、この曲を聴いた際に多くの方が抱くであろう「このラップの女の人は誰?」という疑問について。

 

今となっては知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、この方は今井メロという名の伝説のラッパーです。

 

ラッパー・今井メロ

2006年、突如として表舞台に姿を現した今井メロ氏は、マイクを片手に日本全土に大きな衝撃を与えます。

 

以下は、今井メロ氏が初めて公に披露したとされるラップの映像です。

 

通称「メロラップ」と呼ばれる、個性的なライムに躍動感溢れるフロウ。

後ろにいるおよそラップには興味の無さそうな大人達も、思わず彼女に夢中になり手拍子で応えています。

 

このラップは彼女にとって初ステージらしいのですが、なんとこの映像は当時、テレビで全国放送されています

初ステージにも関わらず、この威風堂々たる立ち振舞い。この時点で既に大物ですね。

 

 

ライブをした事がある方ならばご存知かとは思うんですけど、基本的に「初ライブ」というものはウ〇コ以下の黒歴史にしかならないのが定説なんですね。

かくいう私も初ライブの時はかなりアレな事になってしまったので、もし当時のビデオが発掘されたら静かにこの世から消えようと思っているのですが、まぁ私の話は置いておいて、とにかく彼女のこのクソ度胸には畏敬の念を禁じ得ません。

詳しく見る
【初心者】初ライブの恥ずかしい思い出を語るので聞いてくれ【バンドやろうぜ】

続きを見る

 

とにかく、彼女が出てきた時に私は

 

とんでもねぇヤツが出てきやがった…

 

と戦慄したことを今でも覚えています。

 

もし今だったら確実にリズム隊を付けてYouTubeにアップしていると思いますが、当時私は貧乏過ぎてネット環境が無かったし、そもそもDAWソフトを持っていなかったので諦めました。

 

溢れる才能

そして更に凄いのは、この今井メロ氏は非常に多才な人物であり、特にスノーボードに関してはなんとオリンピック級の実力を持っているとされています。

 

「オリンピック級」とか聞くと、普通だったら胡散臭さが満開で正直「またまた大袈裟な~」と思っちゃいますよね。

ところが今井メロ氏の実力は紛れもない本物であった為、日本代表として本当にオリンピックに出場するという、ミュージシャンとして前代未聞の快挙を成し遂げます(2006年のトリノオリンピックに出場)。

 

伝説 対 伝説

何はともあれ、そんな偉大なる伝説が今回、LOOP H☆Rの曲に参加するというのだからこれはもうとんでもない事です。

 

LOOP H☆Rはその音楽性から「既成概念を打ち破ったバンド」として語られることも多いです。

しかし今井メロ氏は、それよりも遥か以前に規格外のラップで世間に爪跡を残した、言わば既成概念を打ち破ったミュージシャンとしては大先輩にあたります。

 

共演というと聞こえはいいですが、実際のところ今回の「冬の歌」の発表は新旧のカリスマによる世代交代バトルと言っても過言ではありません。

今回はこの辺りにも注目しつつ、曲の分析を進めていきたいと思います。

基本情報

偉大なる先人のご紹介が済んだところで、まずはこの曲の基本的な情報から見ていきましょう。

 

キー

LOOP H☆Rさんの曲にキーという概念は無いのですが、敢えて言うならばキーはCメジャー(ハ長調)に相当するかと思います。

 

テンポ

テンポについてですが、私が計測してみたところ大体68~98BPMの範囲で細かく変動しています(ギターソロ部分を除く)。

 

バラードだという事が影響しているのか、前作「夢」に比べるとテンポの変動は控えめな印象を受けました。

 

ちなみにこちら↓が前作「夢」のテンポの変動で、

 

対するこちら↓が今回の「冬の歌」のテンポです。

 

画像左側の数字がBPMですので、こうして比較してみるとやはり「冬の歌」の方が「夢」よりもテンポの変動はマシですね。

冷静に考えると、「テンポの変動がマシ」とか完全に意味不明ですが。

 

 

余談ですが、この曲の耳コピを開始するにあたりまず初めにDAWソフトのテンポ検出機能でこの曲のテンポを割り出そうとしたのですが、DAWソフトも混乱したのか途中からムチャクチャな結果になってしまった為、泣く泣く自力でテンポを割り出しました。

 

コード進行

この曲のコードですが、大まかに

「C maj」「D maj」「F maj」

の3種類でほぼ全てが構成されています(一瞬だけAmが使われている気がしますが、正直無視しても問題ないレベル)。

 

主に使われる進行としては、

F maj → C maj → D maj → C maj

のような流れが多いですね。

 

Aメロからサビまで、基本的にはコードチェンジのタイミングが違うだけで大体こんな感じのコード進行ですので、この流れを把握すればこの曲のコード進行は抑えたも同然です。

コードチェンジのタイミングについては、ギタリストTAKA氏特有のリズムの揺らぎにより毎回タイミングが微妙に変わっているので、完コピは諦めてなんとなく弾くしかないと思います。

 

なおC majの部分では、途中でC maj7コードを挟む事により独特の空気感を演出しています。

D majの部分は、一部をD7コードに置き換えても良いかもしれません。

イントロ~

前置きが長くなりましたが、まずはイントロから見ていきたいと思います。

 

雪が降り、寒くも美しい冬景色を想起させるような、クリーントーンによる美しいコードバッキングから始まるこの曲。

今回はなんと全編通してゆったりとしたバラード曲となっています。

 

彼らの中で特に有名な2曲(「孤独の鴉」と「夢」)は、両方とも激しくギターをかき鳴らすスピードチューンです。

 

ここに来て突然のバラード曲の発表に、

「俺達はこんな曲も出来るんだぜ」

という、常に進化を模索する姿勢が溢れているように思えます。

 

前作「」もクリーントーンから始まった点は同じなのですが、あの曲は途中から魔界で作られたかのような凄まじいフランジャーのウネリでエライ事になっていたので、それと比べるとかなり聴きやすい曲に仕上げられているのではないでしょうか。

サビ

続いてはサビを見てみましょう(多分0:34~あたり)。

 

ギターについては、正直なところ彼らにしては無難過ぎてコメントに困るのですが、何と言ってもこのサビの注目ポイントはボーカルです。

 

歌姫YUKA氏の鬼気迫るハイトーンボイス。

 

本作ではファルセットも多用し、更にファルセットでも自在に音程変化させるという離れ業を披露しております。

 

低級の鬼ぐらいならば殺せそうな音の刃。

これは間違いなく偉大なる先人・今井メロ氏への挑戦状であると言えるでしょう。

 

「これからは私達の時代だ」

 

切ない歌詞の裏には、このようなメッセージが隠れているように思えてなりません。

メロラップ

それでは、この曲のハイライトの一つでもある今井メロ氏によるラップ部分についても見てみたいと思います(1:18~)。

 

曲の中盤、未来のカリスマ・YUKA氏の発する背筋を凍て付かせるようなファルセット

生半可なアンサーでは、このハイトーンボイスに太刀打ち出来ないでしょう。

 

 

そんな中、元祖カリスマ・今井メロ氏の出した答えは曲のリズムを完全に無視してラップを仕掛けるという荒業でした。

 

初めて聴いた時、私もさすがに

 

あれ?これは高度なポリリズムなのかな?

 

と思ったのですが、何回聴いても私のリズム感では譜割りを理解できませんでした。

 

ポリリズム

複数の異なる拍子が、曲中で同時進行している状態。

ポリリズムは基本的に計算されたズレなので、根気があれば譜面に直す事が出来ますがこの曲は多分ムリです。

 

楽器隊のリズムを無視するなど、普通に考えるならば完全にラリッてるとしか思えないのですが、恐ろしい事に今井メロ氏はギターソロの直前でキッチリと帳尻を合わせてラップを終わらせます

 

既存のリズムを崩壊させた上で主導権を握り、しかしながら終わり際にしっかりとギターソロにバトンタッチさせる事により、曲全体が崩れる事を防ぐ。

 

「テンポ?それはアンタらが決めるモノじゃないよね」

 

これこそが、王者の実力なのです。

 

怒涛の勢いで迫りくるメロラップに、YUKA氏も思わず放心状態。

 

 

ここ数年、破竹の勢いで快進撃を続けていたLOOP H☆Rも、さすがに今回ばかりは相手が悪かったのかもしれません。

ギターソロ

今回のギターソロは従来の曲と打って変わって、軽く歪ませただけの優しいトーンが響き渡る美しいソロとなっています。

 

ギターソロでは、主にC#マイナーペンタトニック(Eメジャーペンタトニック)の構成音が使用されています。

何故Cメジャーキーの曲でこのスケールが使用されているのか私の脳では全く分からないのですが、これ以上考える事に意味は無いような気がするので、考えないようにします。

 

 

ビジュアル面でもTAKA氏が雪上に寝そべってギターを弾いたり、「夢」の時と同様にYUKA氏が水分補給したりと、王道の攻めを展開して今井メロ氏に対抗します。

 

今井メロ氏の怒涛のラップに押され気味のLOOP H☆Rですが、こうなると勝負の行方はもう誰にも分かりません。

アウトロ

ギターソロが終わり、曲も終わりが近付いてきます。

しかし、ここで思わぬ出来事が起こりました。

 

 

なんとYUKA氏の専売特許である水分補給を、今井メロ氏が乗っ取ってしまったのです。

 

ピッコロ大魔王みたいな色をした飲み物を口にする今井メロ氏。

 

ラストは今井メロ氏の見事なコールアンドレスポンス(水分補給返し)にて、曲はエンディングを迎えました。

最後に

最後の最後まで、王者はその手を緩めませんでした。

 

LOOP H☆Rの2人も夢に向かってフルパワーで挑みましたが、伝説のラッパーの壁は厚かったという事なのでしょう。

 

メダルをかじり、微笑むTAKA氏。

 

メダルの色が勝敗の行方を物語っているように思えますが、その笑顔には一点の曇りもなく、まさに青天の冬空のように透き通っています。

 

 

彼らの夢は始動したばかりです。

これから数多くの困難も待ち受けていると思いますが、夢に描いたShow Timeを夢で終わらせる事なく頑張ってほしい。

決して、デカい理想は夢じゃない

スタート前の深呼吸をし、夢に向かってフルパワーで彼らが走っていく様子を、今後も応援していきたいと思います。

おまけ動画

今回のこの曲にリズム隊などを足してみました!

元々がそんなに激しくない曲なので、当初自分でイメージしていたよりもかなり牧歌的な感じになってしまったのですが、お聴き頂ければ幸いでございます。

 

 

正直あれですね、私はハードロック歴が1番長いので、前作のようなマイナー調の激しい曲の方が個人的には作りやすい!(笑)

作成に掛かった時間はこちらの方が短いですが(「夢」はテンポ調整だけで死ねた)、アレンジに悩んでた時間はこっちの方が長かった気がします…。

 

彼らの更なる飛躍を期待しております!

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